異文化交流学:世界へ飛び立つ君たちへ

 

世界へ飛立つ君たちへ “

リーディングプログラムでは、研究者としての専門性や研究能力だけでなく、マネージメント・web閲覧用_印刷不可-0974リーダーシップ能力を兼ね備えた人材の育成を目指しています。その要件の1つとして挙げられるのが国際性です。国際的に活躍できる人材になるためには、語学力に加え、文化・民族間の相違を理解した上でのコミュニケーション能力が求められます。そこで本プログラムでは、留学や異文化交流学といったカリキュラムが組まれ、1年次には1ヶ月サンノゼ州立大学にて語学留学を実施すると共に、現地のトップレベルの大学、シリコンバレーの企業に訪問するフィールドトリップや、企業家やベンチャー・キャピタルの方の講義を受けます。3年次には約10ヶ月間、研究のための留学を予定しています。今回の「異文化交流学」の講義は留学に出かける直前のコース生たちに向けて、留学先での経験をより意義のあるものにするための心構えを知り、コミュニケーション能力を向上させることを目的として行われました。 

講師を務めるのは、国連ハビタット親善大使・異文化コミュニケーターであり九州大学 客員教授であるマリ・クリスティーヌ先生です。イタリア系アメリカ人の父親と日本人の母親のあいだに生まれ、幼い頃から日本、ドイツ、アメリカ、イラン、タイと様々な国に暮らし、多くの異文化体験とカルチャーショックを経験してきました。講義では、そうした自身の経験談を例に交えながら、私たち日本人が海外に出て行き、国際的に活躍できるようになる上で、必要な考え方を教えていただきました。 

同じ共通認識・文脈を持たない相手と交流するにあたって、どういうことを考慮するべきか。また、そのように他者と交流する上では相手から「聞く」「引き出す」という姿勢を持つべきであるということ。そして、最も重要なのは、自ら進んでコミュニケーションするということです。この3つの要素について講義されました。

 

はじめに、「同じ共通認識・文脈を持たない相手と交流するには」。

文化には様々な文脈・背景があります。例えば、相手に対してどのように接するのが礼儀にのっとっているのか、ということも文化によって様々です。目をあわせて話すことが相手に対する敬意であるという文化もありますし、目上の人には目をあわせないことが礼儀である文化もあります。マリ・クリスティーヌ氏自身が、日本人の母による日本的考え方とアメリカの友人たちの考え方、アメリカで当然だと思ってきた振る舞いと日本で求められた振る舞い、様々な違いとカルチャーショックに出会った経験もあわせて語られました。異文化に接する際には、こうした文脈・背景の違いをお互いに共有した上で交流することが重要です。また、皆が同じ共通認識を持つ「ハイコンテクスト・カルチャー」では「言わなくても伝わる」ことがたくさんあります。しかし、そうではない「ローコンテクスト・カルチャー」においては、何事もきちんと説明しないと伝わりません。そのような場においては基本的な言葉で易しく説明する必要があります。これは、国だけでなくジェンダーや世代の違い、研究分野の違い、研究者とそうでない人との違いにおいても言えることです。自分のやっている研究や伝えたいことを、同じ共通認識を持たない人に対しても伝えられるようにすることが大切であるとマリ・クリスティーヌ氏は言います。

 

次に「『聞く』姿勢の重要性」。

講義中、実際に海外で出会った人たちと打ち解けるために便利なアイスブレイクをいくつか実践しました。講義の前半では事前の課題で作成したパワーポイントを用いて自己紹介を行い、さらに後半では、2人組になって相手から情報を聞き出し、自分のペアをクラスに紹介する他己紹介を行いました。ここでは、他者を語るためにはその人の頭の中から上手に情報を引き出さなくてはいけないということを体感しました。国や文化、もしくは研究の分野を越えて様々な人と交流することは、そうして知り合った相手と情報交換をし、自分の研究に活かすことにつながります。その際に必要な「聞く」「引き出す」という姿勢を身につけなくてはいけない、ということが語られました。 

そして、今回の講義で最も重要なポイントは「自ら進んでコミュニケーションすること」です。

マリ・クリスティーヌ氏は、日本人の学生がシャイなのは、積極的に手を挙げ、話しかけることに慣れていないからである、と言います。欧米では、自ら進んで動きなさい、学校で分からないことがあれば自分から手を挙げて聞きなさい、と教えられます。一方、日本では空気や和を乱さないよう、当たり障りなく過ごせるよう育てられます。そうやって育てられた人たちが欧米に出て行くと、あっという間に置いていかれてしまう。そうならないために、自分たちで自分の殻を破らなくてはいけません。講義中のやり取りやアイスブレイクでも、積極的に自ら動くように、ということを強調していました。国際的に活躍できる人材となるためには「積極的に、自分の分野について語れる」ことが必要であるとマリ・クリスティーヌ氏は考えます。海外にも臆することなく出て行き、海外のことや欧米人のマインドをよく理解し、それをふまえて効果的に発信できることが求められます。しかし、こうした国際的なコミュニケーション能力は、一朝一夕で身に付くものではありません。そこで、マリ・クリスティーヌ氏は、今回の留学ではその第一段階として、海外の学生と積極的に交流し、メールやSNSを通じたやり取りを続けられるような関係性をつくるよう呼びかけました

 

今回の異文化交流学の講義を締めくくりにマリ・クリスティーヌ氏は「文化は見せあうもの」である、そして留学先で出会う人たちと、お互いの文化を見せあい、友情を築いてほしいと話しました。どの国の人も皆それぞれ自国に誇りを持っており、国ごとに考え方や思想も異なります。ときにはそれらが衝突することもあります。しかし、文化というものは、ぶつかりあうのではなく、見せあうことができるものです。お互いの文化を見せあい、尊重することは異文化交流において非常に重要であり、かつ面白いものです。そうして、できるだけ多くの友情を築き、日本に帰ってからも交流し続けることができれば、それは彼らの将来を切り拓く足がかりとして、そして、運が良ければ生涯の友情として、彼らの助けとなるでしょう。

web閲覧用_印刷不可-1247

Mari Christine (マリ・クリスティーヌ)
1994年     東京工業大学大学院修了
2000年06月    国際連合人間居住計画(国連ハビタット)親善大使に任命
2002年04月    東京農業大学 客員教授/東京農業大学短期大学部 客員教授
2009年04月   「生物多様性条約第10回締約国会議」(COP10)                  
                     支援実行委員会広報アドバイザー就任
2009年11月    富山大学客員特別研究員就任
2010年08月    シルク博物館名誉館長就任
2013年12月    九州大学大学院工学府 客員教授(異文化交流学)