「これからの世界」で働く君たちへ~変化の時代を生き抜くために~

株式会社コミュニカ 代表取締役 山元 賢治 氏

平成25年10月20日(日)九州大学伊都キャンパスにおいて,本学分子システムデバイス国際リーダー教育センターが株式会社コミュニカ代表取締役 山元賢治氏をお迎えして一般公開特別講義を開催しました。外資系企業で多くの経験を積み、スティーブ・ジョブズをはじめとする名だたる巨匠と渡り合い、日本におけるアップルの復活を牽引してきた山元氏。IT業界の頂点に立つ山元氏が教育の分野で活躍されている背景には、世界を知っているからこそ日本の若者に伝えたい、人を元気にしたいとの思いがありました。

◆「平成の坂本龍馬」を発掘
 2009年度の終わりにアップル・ジャパンを退職しました。約30年間外資系企業に勤め、アメリカをはじめ世界中の国々を飛び回り、外から日本を見るとなんだか元気がない。良いモノを作れるし、世界中からの信頼も厚いのにどうしてなのだろうという思いが沸いてきました。これからのグローバル社会を考えたときに、アメリカ人をはじめ世界中のビジネスマンと戦って苦労してきた経験が、ひょっとしたら日本の若者たちの役に立つんじゃないかと思ったのです。自分の経験を活かして、今の閉塞した日本に革命を起こす次世代のビジネスリーダー、幕末の志士、坂本龍馬のように熱い思いで日本を変えてゆけるそんな人材の養成を目指し、教育の道に進みました。日本を復活させるような若者を応援したい、人を元気にすることが私のミッションです。

◆迷える若者たち
 何をしている時に達成感を感じるか、20歳にもなればもう知っているはずですが、今の日本の学生はとても悩んでいます。先生や両親が “自分は何をやればいいかを教えてくれる”という意識があるのではないでしょうか。それでは達成感は得られません。たった1度のかけがえのない人生です。自分が何になりたいのか、どうしたいのかを決めて自分のケイパビリティ(capability)を上げていかないといけないのです。「どこにいくか」が重要であり、方法は後で考えればよいのです。行き方なんて、100万通りあります。前半、失敗して、後半逆転でもいいのです。途中で失敗するかもしれない。行きたい方向が決まっていれば、それでもいいのです。達成感ややりがいは、個々で違っています。皆さんが決めるのです。多くの人が自分を見失っています。若者だけではなく、医者や大企業の第一線で活躍した人ですらそうです。皆さん、どうか常に自分と向き合って問いかけてください。

◆“The only constant is CHANGE.”
 パソコンやIT環境は、日々変化しています。明日は、何が起こるかわからない業界で生きてきました。そんな中“変わり続ける”ということこそが唯一の変わらない真実でした。
変化に巻き込まれないためには、その変化を「つくり出す側」に回ること。変化をつくり出す人間が、次のビジネスの中心を握るのです。逆に言うと自分が心地良いと感じる時は、変化していない時つまり成長していない時です。成功した人も、絶え間なく努力して変わり続けない限り、追いつき、追い越されてしまいます。昨日の成長は、昨日のためのものであって同じやり方では明日の成長はない。慢心せず、変わり続けなければならない。“CHANGE”していく覚悟こそが、世界でたたか戦っていく上で必要であり、日本復活の鍵でもあるのです。

◆猛烈な好奇心が成功者のキーファクター
私が世界で見てきた成功者の共通点は意外ですけど簡単なものでした。「ものすごい好奇心を持った人」です。理系だから◯◯は知りませんできません、文系だから◯◯は知りませんできません…、では通用しません。何かをしないという言い訳を作ってしまったら、自分が小さくなります。専門分野のことについて深く知っていることはもちろんですが、周辺のことにもすごく興味を持つということはとても大事です。一見、簡単なことのようですが実はものすごく大切なことなのです。
以前、ソフトバンクの孫正義氏と米オラクルのラリー・エリソン氏の自宅へ行ったことがあります。孫氏は、朝ごはんを食べながら、3時間、英語で坂本龍馬のことをエリソン氏に話していました。孫氏とエリソン氏の猛烈な好奇心に感動を覚えました。アインシュタインは「私には特別の才能はない。ただ私は、情熱的に好奇心が旺盛なだけだ。」という名言を残しています。何事にもワクワクする、夢中になれる人にはかなわないですよ。

◆今求められるリーダー像
自分一人でやりたいことが達成できるのであれば、リーダーシップは必要ありません。しかし、大きな夢の達成には、百人なり一万人なり五万人なりの協力者が必要なのです。だからこそ、リーダーシップが求められるのです。
スティーブは、大切な家族の写真を持ち歩いたり、音楽をもっと気軽に楽しんだりする方法はないかと常に考えていました。そして、その思いにみんなが賛同し働きiPodを実現させたのです。リーダーはやりたいことがはっきりとしていなければなりません。そのようなリーダーの下で働いている人間は、やりがいを感じています。自分がどうなりたいかわかってない人間について行くのは不幸せですよ。部下が強みを発揮できる働きやすい環境をつくることがリーダーとして大事です。
九州大学で行った特別講義では、私が定義するリーダーに必要な108つの覚悟から6つの要素を紹介させてもらいましたしました。人の上に立ち、その家族をも幸せにしたいと思っているリーダーには覚悟が必要なのです。テクノロジーが高度になり、人間よりも優秀な機械とばかり向き合うようになると、人間関係が希薄になり疲れてしまいます。1980年代、ハイテクの反対語で“ハイタッチ”という言葉がありました。急激な変化を続ける時代に必要とされる人間同士のコミュニケーションや、人に対する思いやりのように「変わらない価値」を表現した言葉です。現代においても、もっと人間同士がコミュニケーションし、もっと心をタッチさせる必要があるのではと感じています。最近、私は“ハイタッチ”に代わって“コンパッショネイト(Compassionate)”という表現を好んで使用しています。色々なリーダー像があるなか、私が目指して欲しいリーダー像は、コンパッショネイト=思いやりをもって日本を復活させるそんなリーダーです。コンパッショネイト・リーダーシップは、例えば朝の挨拶。私がアップルに務めていた時は、毎朝5時に出勤し、毎日何かしら発生するトラブルに向き合っていました。リーダーは辛いことも多い。でもどんなにきつくても、どんな気分であっても、9時に出社してくる社員たちには笑顔で挨拶するのです。その時に、相手の健康、心の状態、仕事の進捗、家族の健康まで、気遣うことができますか。これこそが、“思いやり”のリーダーシップです。

◆社会に旅立つ君たちへ
今、皆さんの前には夢や可能性が無限大に広がっています。無限の可能性を狭めたり潰したりしているのは、政治家でも社会でも学校でもなく自分自身なのです。あなたは今までに感動したことがいっぱいあるだろうし、達成感を感じたり涙を流したりしたこともあるはずです。その経験を自分の胸に秘め、何度も聞き返して欲しいのです。自分がどうなりたいのか、“Think”、考えることが将来に通じる道なのです。明確なビジョンがないリーダーに誰もついていきません。
これからの時代は、個々で成功の形は違ってきます。秘書がいて、運転手がいる生活が成功なのか?スティーブは、死ぬまで自分で運転していました。じゃあ、どうなりたいのか。それは自分で築き上げないといけません。自分で「こうなりたい」という未来像を描き、それにいかに近づけるか、それが成功かどうかの指針になるのではないでしょうか。

『Newsletter Vol.3(2014.01)』掲載