Special Interview(1)

分子システムデバイスリーディングプログラムでは、理工系分野での女性リーダーの育成と、国際社会で活躍するグローバルなリーダーとなるために必要な、男女共同参画の理念を正しく理解するために男女共同参画活動に取り組んでおります。今回は、3人のお子さんの育児と仕事を両立されている、プログラム専任教員牧野恵美准教授にアメリカの状況とワークバランスについてお話を伺いました。

◆アメリカで学んだワーク・ライフ・バランス
3人目の出産の後、一家でのアメリカ行きを決意しMBA留学をしました。日本では、学ぶ環境が整っていないことや、子供の教育環境を考えてのことでした。海外での生活経験がある夫の理解があったからこそ実現しました。日本では男女の差だけでなく、年齢でもステップアップをする機会が少ない、ましてや子育てが終わった後の女性の社会復帰、ステップアップとなるとかなり厳しいのが現状です。アメリカの大学院は奨学金などのサポートシステムが充実していることもあり社会人が多く、40代、50代の学生がたくさん学んでいました。 日本の会社は事務処理能力が高くシステム化が進んでいるにも関わらず、長時間の労働=仕事という意識が根強く残っています。これからの会社では、そのようなやり方では社員の力を最大に発揮できない上、会社を辞めかねません。大学でも深夜まで研究していることが多々見受けられます。しかし、留学先の大学などでは、教授は夜の講義がない日には午後6時ごろには帰宅していました。共働きの一般的なサラリーマン家庭では、両親とも夕方6時、遅くとも8時には帰宅し自宅で食事をとることが出来るのが普通です。育児、家事、地域でのボランティア活動も一種の仕事という認識があります。家事や育児を夫婦で分担するには、夫婦ともに帰宅時間が早くなければ持続できません。ですから、日本では専業主婦1人が家事、子育てを抱え込んでしまいやすい。急速な高齢化社会が進むなか、女性の労働力率を高めることが、求められている、にもかかわらずです。 子育てのことで言えば、社会制度やパートナー間の意識の問題も多少、関係します。二人でやれば、量的な負担は軽くなっても、気持ちの上での負担感は必ずしも軽減されません。だからこそ、私は、育児や家事の分担をバランスよりインテグレーション(統合)と考えています。バランスと考えると均衡を保つのが難しくなりますが、2人で統合(インテグレーション)と意識して、育児や仕事をできる人がするようにすれば、気持ちも楽になりますし、いい環境が作ることができると思います。家族の在り方を子どもが見て育つというサイクルが確立できれば、これからの世代の意識も自然に変わってくるのではないでしょうか? これは、育児だけではなく、親の介護も同様ではないかと思います。育児や介護をしている人に限定するのではなく、子供がいる、ないに関わらずあらゆる社会の男女が、自分のやりたいこと、社会貢献、趣味、スポーツなどできるようにならないと、本当の意味での男女共同参画社会になりません。そのためには、男女関係なく夕方には家に帰れる職場、有休をしっかり取得できる環境作っていくことが大事だと思います。

◆理系女性リーダーの活躍を期待
理系の分野において女性は少ないのですが、例えば物理でもトップレベルで活躍している女性はたくさんいらっしゃいます。ただ、すそ野でそのような男女の差が出ていることは何らかの原因があるのではないでしょうか。
私が博士号を取得したクレアモントのハービー・マッド大学では、女性のコンピュータサイエンスの学生をいかに増やすかという取り組みを行っています。プログラムを勉強する際に、女性が入門から挫折することが多かったため、講義の中身を全面的に見直しました。また、アメリカで毎年開催されている女性しか集まらない理系の会議に参加させ、理系の女性が第一線で活躍している現場を見学させるなどの取り組みを行った結果、コンピュータサイエンス分野における女子学生比率が上がったそうです。男性で9割占める職場であればそのような手本が少なくなります。日本の会社は管理職の学歴や出身大学を見ても分かるように、男女という問題以外でもあらゆる意味でダイバーシティ=多様性が少ないと言えるのではないのでしょうか。日本でも女性が活躍している会社はたくさんあるので、ロールモデルを見せていくことで意識が変わってくるかもしれないと感じています。
あるメーカーのノンアルコールビールの開発には女性が携わり、 妊娠中や授乳中の女性やビールが苦手なのに飲まなければならないOLなどのニーズに着目して、大ヒット商品となったと聞きます。それまで、ビール業界では、ノンアルコールのビールなど売れるわけがないとされていました。ちょっとした視点の違う人間が関わることでイノベーションがおきたのです。大学の現場でも同じです。九州大学の強みというのは、多様な学生、分野が集まっていることです。現在担当している講義も異なる分野、年齢、国籍、価値観の違いがある学生が集まってグループワークすることによって面白い話題がたくさん生まれています。分子システムデバイスコースでは、1年次・3年次に留学の機会が与えられていますので、様々な現場を見て関わることで相手の立場で物事を考えられる、相手を思いやる気持ちを持てる人になってほしいです。それは、本プログラムが目指すグローバルリーダーの資質として必要なスキルです。
男女共同参画の基本は、男女の違いを認識して対等に社会のあらゆる分野における活動に参画できる社会です。互いを理解しょうと思うことが大切なのではないでしょうか。

『Newsletter Vol.3(2014.01)』掲載