【一流学: 一般公開特別講義】2016年12月3日(土)外村 仁氏&林 信行氏『君たちの中にある才能を開花させよう』

AIが恐ろしいまでの勢いで進化し始めている。いま人が行っている仕事の多くが、近い将来AIに取って代わられるとの予想もある。仮に、そんな世の中が実現するとすれば、人は何をすればよいのだろうか。2016年12月3日(土)一流学・一般公開特別講義に林 信行氏、外村 仁氏をお迎えしてお話を伺いました。

「これから我々が迎えようとしている時代について」

林 信行/Nobuyuki Hayashi
コンサルタント/ジャーナリスト。ifs 未来研究所研究員。ジェームス・ダイソン財団理事。

21世紀社会の3元素

今からちょうど10年前、故スティーブ・ジョブズがiPhoneを発表したとき、彼は「時おり、革命的な製品が出て、すべてを変えてしまう」と語りました。実際、iPhoneは私たちの衣食住すべてを一新しました。物心がついた頃には既にスマホがあった皆さんには、スマホがなかった時代のことは想像できないかもしれません。けれども、iPhoneが登場して世界は明らかに変わったのです。
僕は最近、スマートテクノロジー、ソーシャルテクノロジー、3Dテクノロジーを『21世紀社会の3元素』と呼んでいます。
スマートテクノロジーとはiPhoneやiPadなどのスマートメディア、ソーシャルテクノロジーはLINEやFacebookなどのソーシャルメディア、そして3Dテクノロジーは3Dプリンター。この3元素が、これからの衣食住を変えていきます。
例えば3Dプリンターを使えば、自分の体型にぴったりフィットするオートクチュールを作れます。従来のモノづくりでは高価な金型を使うために、大量生産で単価を下げる必要があったけれども、3Dプリンターなら、1個でも安価に製造できる。ソーシャルメディア関連では、クラウドファンディングで資金調達し、モノづくりを始めるベンチャーも増えている。いずれも以前には考えられなかった動きです。こうした変化の根幹となるのが、コンピュータ+αの機能を備えているiPhoneやiPadなどのスマートテクノロジーです。

テクノロジーが世界を変える

最近流行りの「IoT(Internet of Things)」も、iPhone経由で家庭に入ってきます。玄関のスマートロック、テレビのリモコン、ロボット掃除機などすべてまとめてiPhoneがコントロールします。いまアップルはスマート家電をiPhoneでコントロールする「ホームキット」の標準化作業を急いでいます。既に東京の私の家ではSiriに「灯りをつけて」と言えば、電球が点く。
かつてマーシャル・マクルーハンは「我々が道具を作り、その道具がユビキタスに広がってくると、やがては道具が我々自身の生活や体まで作り始める」と語りました。まさに、これだけスマホが普及すると、いつか気が付かない間に自分がスマホサイボーグになっている……、そんな事態も起こりうるでしょう。
「テクノロジーとは、進化の拡張をするためのものだ」ともマクルーハンは語っています。これもその通りで、身体に障がいを持つ人たちのための義手や義足の進化は著しい。2020年の東京では、パラリンピアンの成績がオリンピアンを抜き始めるとの予想もありますが、訓練を積んだアスリートだけでなく、より身近な障害者の方々でも身体の欠損している部分をテクノロジーで補うことで、生身の健常者を越すパフォーマンスを発揮することが増えてくることでしょう。テクノロジーの進化には際限がありません。

AIの進化と人の仕事


今のところあまり注目されていませんが、アップルの最新製品「AirPods」は、iPhone新時代を象徴する製品です。Bluetoothで簡単にiPhoneにつながるヘッドフォンですが、トントンと軽く叩けばSiriを呼び出せる。今のSiriは非常に優れていて「今日の日没は?」「パリの現在時間は?」と尋ねるだけで、直ちに答えが耳に返ってきます。もはやiPhoneをポケットに入れたまま画面を覗き込む必要さえありません。
何もかもが音声で操作できる、だからヒアラブル。そのSiriのバックグラウンドでは、AIが動いています。機械学習/深層学習の進化は凄まじく、人間の脳の仕組みに近いニューラルネットワークができつつある。
こうなると従来、人がやっていた仕事は、どんどんAIに置き換えられていくでしょう。既に東京のデパートにはAIソムリエやAI利き酒師がいて、「あなたに向いているのは、この酒です」と薦めてくれる。医師、弁護しかも、こうしたAIが力を発揮するのは画面の中の世界だけではありません。AIがロボットと繋がることで肉体労働も行えるようになります。職人技をAIがマスターして、ロボットの動きとして再現したり、農業はドローンとロボットが代わりにやってくれつつあります。そのとき、人は何をするのか。

人類の大転換期に、どう生きていくか

人類全体がどんどん豊かになる一方で、全人口が豊かさを享受するためには、地球が2.5個必要だといわれています。そんな状況の中で、私たちは、どうやって生きていくべきなのでしょうか。
頭脳労働から肉体労働までを人工知能が置き換え始める時代、我々は何をすればいいのか。価値観を根底から考え直す時期に来ています。ジョブズはテクノロジーは「人間にとっての自転車」だと言っていました。能力を増幅、拡張してくれる道具です。そういう意味ではAIも少なくとも自我を持つ「汎用AI」が誕生するまでの間は道具と捉えればいいと思います。
一方でこれからの時代、人間にはコンピュータの特性とは逆の価値観「人間らしさ」が求められる時代になると思います。「多くの体験を積むことから生まれてくるストーリー」、「非効率さや丁寧さ」。これまで無駄と思われることも多かったこうしたことこそAIで代用しても意味がないこと、人間がやってこそ価値があることなのではないでしょうか。
また多様性も重要です。友達の多様性も重要なら自分の中にどんな多様な価値を共存させているかも、これからは大きな意味を持つはずです。AIなどのコンピュータはデータをどんどん集約し一様化する特性がありますが、人は1人の人間でも多様な価値を共存させているものです。自分の価値観を一つに絞り込まず、自分にしかない軸を3本ぐらい持つ。どんな掛け合わせの軸を持つかが皆さんのユニークな価値を生み出します。自分が何かを欲しいと思ったら、それを自分で作り出せるのがこれからの世界です。思う存分に発想を広げて、自分が求めるものを創り出す。自分の望む未来を、自分で創り出してください。

(文:竹林 篤実)

 

*外村 仁氏の講演は次号(vol.13)で掲載いたします。